全国日本調理技能士会連合会とは

師範伝書『庖丁軌範』に学ぶ“陰陽五行説”と日本料理

2019/07/25

 (一社)全国日本調理技能士会連合会師範会の師範伝書でお馴染みの『庖丁軌範:りょうりのしきたり』巻一に日本料理を構成する「五味・五色・五法」について述べられています。その根拠となる“陰陽五行説”は、古代中国の思想に基づくもので、この世の森羅万象を解き明かそうと何千年もの間、自然の摂理を幾多の賢人が検証して得られた東洋哲学の一つです。

 その陰陽の考え方に基づいて日本料理が理論づけられており、積極的な性質をもつ日・春・南・昼などを陽、消極的な性質をもつ月・秋・北・夜などを陰とし、すべての物は二つの相反する性質をもつもので調和し成り立っているとされています。

 日本料理の片刃の庖丁は右手で握り、右側になる面を“陽”、左側になる面を“陰”と呼びます。この庖丁で丸い林檎の皮をむくと右側の面があたるので丸いものを陽といい、大根を輪切りにして正方形に切る場合、庖丁の左側の面があたるので角張った形に切る場合は陰となります。因みに刺身の場合、上身にして柵取りした魚肉を右端から引いていくのを陽の刺身、左端から薄く引いていくのを陰の刺身といいます。陽の刺身は角張った陰の器に、陰の刺身は丸い陽の器に盛り付けるのが常識です。

 また五行とは木から火を、火から土を、土から金を、金から水を、水から木を生じる五行相生(そうじょう)と、木は土に、土は水に、水は火に、火は金に、金は木に克つという五行相剋の考え方をいい、相生相剋の関係にあります。五味は甘・鹹(しおからい)・辛・酸・苦の五つの味、五色は素材の赤・黄・青(緑)・白・黒をいいます。五法は生・焼・煮・蒸・揚の調理法をいい、これらの調和がとれた四季折々の食材による献立によって日本料理が栄養的にもバランスよく成立することになります。

 常に『庖丁軌範』をひもときながら日本料理の伝承と普及に努めたいものです。

(一社)全調技連会長 片田勝紀