2017/09/25
農林水産省によると今や社会問題となっているシカやイノシシによる農作物の被害は年間200億円にものぼるといわれています。今年度から国を挙げてこの対策にのりだすために内閣府が「ジビエ利用拡大に関する関係省庁連絡会議」(議長は菅義偉官房長官)を発足させ、関連団体の一員として出席させて戴きました。
「野生鳥獣による農作物の被害などの地域への被害を防止するとともに、農山村地域における所得向上を図り、地方創生を実現することを目的する」とあり、有害動物がこれ以上増えるのを防ぐために捕獲し、同時にその肉を食用として外食や学校給食、ペットフードなどに積極的に利用しようという計画であります。
2013年度の統計ではエゾシカを除くニホンジカの生息数は約305万頭、イノシシは約93万頭もいるといわれ、過去10年で倍増し、捕獲頭数を増やしても個体数は減っていないという。基本的には駆除したものをいかに活用するかが問われており、調理業務に従事する我々に取りましても、とりわけ日本料理では取り扱うことの少なかったジビエ料理ではありますが、ジャンルを問わず本格的な“ジビエ料理”として考案・開発し、提供する方法を早急に検討する必要があります。
一方では農産物の被害を減らすには、収穫前の夏場に捕獲するのが最適であるのに対し、食用とするには脂肪ののった秋以降に捕獲するほうが商品価値が高くなるのではという矛盾も抱えることになります。また、鳥獣を捕獲する側の狩猟免許の所持者も激減しているという状況もあり、人口減少による過疎化と「限界集落」問題も深刻化する中で、地方創生の実現に向けての取組みであるという認識のもとに、前向きに対応したいと思います。
日本食では冬場になると身体の温まる鍋料理がメインになります。山間の旅館などでは猪鍋がでます。イノシシ(猪)はヤマクジラ(山鯨)とも呼ばれ、“牡丹鍋”で知られます。両国国技館のそばに1718年創業の徳川吉宗の時代から300年愛されている「ももんじや豊田屋」があります。江戸の猪鍋そのままに野生の猪肉を取り寄せて提供しているそうです。
(一社)全調技連会長 片田勝紀